こんばんは。
ハイパーセルフ、
すべひとです。
えーと今日はね、
見えない心は、とりあえず置いといて、
測れる『行動』だけをハックする、
っていう話。
前の回でさ、
フロイト、パールズ、ロジャーズと、
「感情や体験」に向き合う、
心理学の流れを追ってきたじゃない?
でも最後に、一つの問いが残った。
「寄り添って、気づきが生まれたとして、
それで、本当に人は変われるんすか?」
「その効果を、どうやって
科学的に証明するの?」
っていう。
コールセンターの現場でも
よくあるんですよ。
新人さんなんかが、
理不尽なクレームを経験して、
電話が鳴るたびに、ビクッとなる。
応答ボタンを押す手が震えちゃうとかさ。
いくらロジャーズ流に、
「しんどいよね。その不安、わかるよ」
って寄り添って、今の自分の感情に、
気づいてもらったとしても。
「電話の音が鳴ると、手が震える」
っていう身体に染み付いた行動のクセは。
なかなか、消えなかったりするんだよね。
寄り添うだけじゃ、
救えない瞬間がある。
今日お話しするのは、
そんな現場の切実な問いに、
「科学」というツールを持って、
真っ向から応えようとした人たちの物語。
見える行動をハックする
「無意識とか、感情とか。
そもそも目に見えないものを
扱うから、難しいんだ。
だったら、目に見えるものを変えよう。
数字で測れるものを、変えよう」
っていう、
行動療法の専門家たちの話。
これ、心理学の歴史の中では。
めちゃくちゃ大きな、方向転換なのね。
ワトソンの行動主義宣言
まず登場するのが、
ジョン・B・ワトソンっていう、
アメリカの心理学者。
彼が1913年に発表した、
「行動主義宣言」。
これが、歴史を変える一撃になった。
当時の心理学ってのはさ。
「自分の心の中を報告してください」
みたいな内省法、
つまり「主観」が主流だったんだけど。
ワトソンは、
「心の中なんて、他人からは観察できない。
そんなの科学じゃない」って切り捨てたの。
「心理学は、意識じゃなくて。
客観的に観察できる『行動』だけを、
研究対象にするべきだ」
って言い切ったんだよね。
彼がベースにしたのは、
「パブロフの犬」で有名な学習理論。
「古典的条件づけ」とか、
「レスポンデント条件づけ」って
呼ばれるもの。
梅干しを見ると、
勝手にツバが出てくる、みたいな。
自分では制御できない、反射反応のこと。
恐怖も学習される
ワトソンは、「恐怖だって、
後から学習できるバグなんだ」
ってことを証明するために、
ある有名な実験を行った。
それが1920年の
「リトル・アルバート実験」。
これヤバい。
生後8ヶ月の赤ちゃん、
アルバートくんに、
真っ白でフワフワした
可愛いネズミを見せる。
その瞬間に、赤ちゃんの背後で、
鉄の棒をハンマーで、ガーン!と叩く。
大きな音に、赤ちゃんは当然、
泣き叫ぶよね。
これを、何度も繰り返す。
そうするとアルバートくんは、
ネズミを見るだけで、
音を鳴らさなくても、
激しく泣き出すようになったんだよ。
「大きな音(恐怖の刺激)」と
「白いネズミ」が頭の中で、
完全にリンクしちゃったわけ。
しかもだよ?
ネズミだけじゃなくて、白いウサギも、
サンタクロースの白い髭すらも、
怖がるようになっちゃった。
ワトソンが証明したのは、
「恐怖という感情ですら、
環境との組み合わせによって、
外側からインストールできる」
っていう事実だったんだ。
それにしても今の倫理基準じゃ、
完全にアウトな実験。
まさにマッドサイエンティスト案件。
しかもワトソンは、
恐怖を植え付けたあと、
それを除去する手続きを
しなかったって記録されてる。
そんな人間だから、
その後いろいろあって大学を辞めて
広告業界に転身するんだけど。
なんせ人の行動を動かす天才だから、
そっちでめちゃくちゃ成功したらしい。
なんか、妙に納得しちゃうよね。
ともあれ、
この恐怖を学習しちゃうプロセスってさ、
さっきのコールセンターの新人さんも、
まったく同じ状態なんだよね。
「電話のベル」という音と、
「怒鳴られた恐怖」が強烈に、
条件づけされちゃってるわけ。
スキナーと正の強化
で、このワトソンの理論を。
さらに実用的な「技術」に高めたのが、
B・F・スキナーっていう巨匠。
彼が作ったのが、
「オペラント条件づけ」っていう概念。
スキナーはこう考えた。
「人間の行動は、その後に何が起こるか、
という『結果』で決まる」
そんでやったのが、
有名な「スキナー箱」の実験。
箱の中のネズミが、
偶然レバーを押すと、エサが出る。
そうするとネズミは、味を占めて、
どんどんレバーを押すようになる。
これ、結果として「ご褒美」が
与えられて、行動が増えるから。
「正の強化」って呼ぶんだよね。
コールセンターでも、
これ、ボクら毎日やってるのよ。
新人さんが勇気を出して、
1件電話を取れたら。
すかさず、「今のトーン、最高だったよ!」
って褒めちぎる。
これも、立派な「正の強化」を
使ったハックなんだよね。
で、スキナーの理論で一番怖いのが、
「たまにしか、ご褒美が出ない」とき。
毎回エサが出るよりも、
いつ出るかわからない設定にした方が、
ネズミは、狂ったようにレバーを押し続ける。
……これ、心当たりない?
そう。
スマホゲームのガチャとか、
パチンコとか。
「たまに、当たる」という刺激ね。
人間を、抗えない中毒状態に
追い込むシステムの根本は、
全部、このスキナーの理論で
説明できちゃうんだよ。
系統的脱感作法
さらにもう一人。
この行動療法の流れで、
優れた技法を作ったのが、
ジョセフ・ウォルピ。
彼が開発したのが「系統的脱感作法」。
アイデアは、いたってシンプル。
「恐怖とリラックスは、
同時には存在できない」
体が100%リラックスしてるときは、
不安を感じることはできないんだ、
っていう。
だったら、
「リラックスの練習」をしながら、
「怖いもの」に少しずつ、
段階的に慣らしていこうぜ、って。
新人研修への応用事例
これ、
ボクが新人さんを育てるときにも、
かなり意識してるんだよね。
電話が怖い人に、
いきなり本番のクレーム対応を
やらせたりはしない。
まずは、呼吸を整える。
ベルが鳴ったら、
一回だけ息を吐く。
肩の力を抜く。
手元のスクリプトを見て、
最初の一言だけを、ゆっくり声に出す。
それを練習する。
次に、ロープレ。
最初は、
めちゃくちゃ優しいお客さん役。
次に、少しだけ不機嫌なお客さん。
その次に、ちょっと声が大きいお客さん。
段階を分けて、
少しずつ負荷を上げていく。
で、うまくできたら、
その場でちゃんと褒める。
「今の間、よかったよ」
「声のトーン、落ち着いてたよ」
「最後まで逃げずに聞けたね」
そうやって、
電話のベルと恐怖だけが
結びついていたところに。
「できた」
「褒められた」
「意外と大丈夫だった」
っていう新しい記憶を、
少しずつ上書きしていく。
これが、現場でやってる
系統的脱感作なんだよね。
これを積み重ねるうちに、
いつの間にか、徐々に徐々に、
恐怖が「背景」に退いていくわけ。
これって、ボク自身の話でもあるんだよね。
いきなり人生を変えるぞ、って
荒波に出るんじゃなくて。
まずは資格の勉強をする。
このポッドキャストで、
自分の声を出してみる。
怖いものに、
安全な距離から少しずつ近づいていく。
そう考えると、
この番組を始めたこと自体も、
ボクにとっては小さな脱感作なのかもしれない。
上手い伝え方を練習する
他にもアサーションって言って、
自分も相手も大切にする
上手な伝え方のスキルも、
この行動療法の流れから生まれてる。
たとえば人間関係の問題を解決するのに、
あなたちょっと性格を変えましょうか、
なんて無理なハナシ。
だから、行動っていうか、
モノの言い方をさ、
スポーツみたいに訓練しようっていう、
そういう考え方なんだよね。
たとえば誰かに
腹の立つことを言われた時、
「そんな言い方ないでしょ!」
って反応しないで、
「さっきの言い方だと、
ボクは責められているように感じたよ」
って優しく伝える。
相手を殴るんじゃなくて、
自分の感じたことを、具体的で、
配慮のある言葉に置き換える。
これも、
心の中を根性で変えるんじゃなくて、
「伝え方」という行動を練習して
変えていく技術なんだよね。
行動療法が持ってきた、一番の革命。
それは心理療法を科学にしたこと。
主観的な「気づき」だけに頼らず、
客観的な「行動の変化」を、
効果の指標にした。
認知療法への流れ
ただね、この強力な行動療法にも、
次の世代が、向き合わなきゃいけない壁が
あったんだよ。
たしかに、行動は変えられる。
でもたとえばさ、
週明けの会議でプレゼンする重圧が
事前の練習で少し薄れたとして。
でも、頭の根っこの部分に、
「どうせボクは、人前で話すのが
下手なダメ人間だ」っていうさ、
根深い思い込みが残ってたら、どうなる?
外側の行動だけを無理やり変えても、
内側の「思考のバグ」がそのままだとしたら。
きっとまた別の状況で、
エラーが起きちゃうかもしれない。
じゃあ、行動の次は、
思考そのものに手をつけよう、
考え方のクセをハックしよう、
っていう人たちが、次に出てくる。
それが、現代の心理療法の主流、
「認知療法」の世界。
次回は、そこへ
足を踏み入れてみたいと思います。
今日手に入れた視点
さて、今日手に入れた、行動療法の視点。
「目に見える行動から、変えてみる」。
明日から、こんな風に使えるよね。
「やる気が出たら、やろう」って
内面のコンディションを待つんじゃなくて。
「とりあえず、5分だけ机に向かう」って。
行動の方を、先に起こしてみる。
行動を変えれば、感情は後から
勝手についてくる。
この「逆転の発想」を知ってるだけで、
自分の行動を無理なく変えられる。
そんな気がしてくるよね。
今の自分と重ねて、
「これ、正の強化が必要かも」って
思い当たることがあったら、
ぜひコメントで教えてね。
今日はここまで。すべひとでした。
ではまた!